2 山路来て何やらゆかしすみれ草
3 若葉して御目の雫ぬぐはばや
4 象潟や雨に西施がねぶの花
5 美しきその姫瓜や后ざね
6 初時雨猿も小蓑を欲しげなり
7 蛸壺やはかなき夢を夏の月
8 朝顔は下手の書くさへあはれなり
9 旅に病んで夢は枯野をかけめぐる
1 五月雨の降り残してや光堂
そのかみにこの地で活躍したもののふたちを哀れに思って、
五月雨もお堂には雨を降らせなかったのだろうか。
お堂だけが建立当時の黄金色のまま、光り輝いている事よ。
2 山路来て何やらゆかしすみれ草
山道を歩いてふと見ると、すみれ草がひっそりと可憐に咲いている。
そのすみれに何ともなしに心惹かれる事よ。
3 若葉して御目の雫ぬぐはばや
鑑真和尚様、和尚様はどんなにか苦労なさって、
唐の国からはるばる日本まで仏教をお披露目にいらっしゃった事であろうか。
その盲いた目を開くことは私にはできぬが、
せめてこの青々と萌え出た若葉を以て、
和尚様の目から迸る涙をぬぐって差し上げたい事だ。
4 象潟や雨に西施がねぶの花
象潟の光景の、何と物憂くも美しい事だろう。
その絶景は、あたかも雨に濡れそぼったネムノキの花、
古のなやましくもなまめかしき美女西施が眠っているかのようだ。
5 美しきその姫瓜や后ざね
小さな瓜のかわいらしくも美しい事だ。
いずれはお后さまになるようにと大切に育てられた、おひいさまの瓜なのだろうね。
6 初時雨猿も小蓑を欲しげなり
冷たい晩秋の雨に濡れて、お猿さんたちも私の身につけている蓑を欲しがっているようだね、
私が身につけているのでなければ、君たちにも着せたいところだが。
7 蛸壺やはかなき夢を夏の月
夏の空に月が照る中、
海中では蛸が、明日は食われる身である事も知らず、
はかない夢を蛸壺の中で夢見ている事だ。
8 朝顔は下手の描くさへあはれなり
朝顔は何と趣深い花である事か。
絵のまずい人が描いてさえ、しみじみと情趣に感じ入る事だ。
9 旅に病んで夢は枯野をかけめぐる
旅の最中に病を得て、それでもなお、私は夢の中に己を見る。
私の名句を詠みたいという想い、生涯の夢は、荒野の中を駆け回るのだ。
小林一茶と松尾芭蕉のキャラ濃いせいで与謝蕪村の影が少し薄い
ワイの県で詠んだ句無かったわ