曲淵と訴訟(その1)
曲淵庄左衛門は板垣信形の草履取りから、板垣衆の武将に成り上がった勇将であったが、生来協調性に欠けトラブルメーカーであった。さて、板垣信形が討死したあと息子の信憲が後を継ぎ、庄左衛門は信憲の寄子となった。
信憲は父同様に寄子から段銭という年貢を徴収した。段銭とは軍役のために寄親が寄子に課す税金であるが、父・信形は庄左衛門をかわいがっていたので特別に徴収を許されていたという事情があった。ところが板垣信憲はこれを強要したのだ。
信憲の言い分はこうである。
「他の寄子が払うのに、庄左衛門だけが払わないのはおかしい。父が目をかけていたとはいえ、この度からは違う。わがままを言うのにもきりがある。」
すなわち、租税賦課の平等適用を主張したのである。
すると庄左衛門は、カンカンになって主人の板垣信憲を怒鳴りつけた。
対する庄左衛門の言い分はこうである。
「先代の殿様の仕方を尊重するのが子としての筋であろう。わしはビタ一文たりとも払わねえ!!どうしても払えと言われるのなら、貴様の首を打ち落としてやるぞゴルァ!」
すなわち、租税免除の慣習法の適用を主張したのである。
困った信憲は家老の山県・原に、
「信玄公に申し上げてらちをあけてくれるように協力してくれ」と頼んだが、
両人は「また、例の庄左衛門の病気かwww面倒に巻き込まれるのはやだよ。」と取り合わなかった。
仕方ないので、長坂と跡部に助力を依頼し、やっとこさ信玄にこの紛争を取り次いでもらうことが
できた。
両者の言い分を聞いた信玄は、腹を抱えて笑い出した。信玄がこれほど笑ったことがないと言う程に大笑いした。
「曲淵めはものを知らぬやつだ。犬のような奴ではないか。犬は花壇を踏み荒らし、棒で追われるとその人に吠えつくモノだ。
しかし、鹿や狐を追わせると他の者ではまねができない。ああいう変わり者を家中に1人や2人いた方が、面白いではないか。
曲淵は20か所の戦傷のある歴戦の勇者であり、彼ほどの勇者だからこそ広言を吐けるのだ。ゆえに、この件で曲淵を許してもだれも税金支払い拒否のマネはしないであろう。」
結局この紛争はうやむやになったという。
(甲陽軍鑑)
ニュース
曲淵と訴訟(その2)
庄左衛門は無類の「訴訟マニア」で、気に入らないとすぐ難癖を付けて公事奉行所に訴えるという悪癖があり、なんと、43歳までに訴訟提起は75回にも及んだ。
しかし、そのほとんどが「いいがかり」であったから、勝訴1回・和解1回あっただけで後は敗訴73回という有様であった。
ある時、庄左衛門はいつものようにいいがかり訴訟を提起して案の定敗訴した。
敗訴した庄左衛門は、
「今度のは負ける訴訟ではなかったが、負けたのは、奉行に賄賂をしなかったせいでござろう。わしの在所にはさらし柿がどっさりあるから、この次はその柿を賄賂としてもって参りましょう」
と公然と奉行を侮辱した。
公事奉行の一人の桜井安芸守はその侮辱に対して、
「曲渕殿の言い分は信玄公を軽んじるものであろう。われわれは上様が定めた法度にしたがって裁いておる。再度訴訟を提起するならば、今度は正しい理屈をもって参られたい。たとえ賄賂を山ほど積んで参っても負けは負けというもの。お分かりであろうな?」
それを聞いた庄左衛門は、
「それがし小身にて桜井殿には地位や肩書きではたしかに負けます。しかし、斬り合いではそれがしの勝ちですぞ。口惜しく思いなさるなら、勝負してやろうか。またたくまに、貴様の頭を切り砕いてやんぞ。わかってんのか、ゴルァ!!」
と言って脇差に手をかけた。
奉行衆は青ざめて一言も発せず帰宅したが、これほどまでに侮辱されて泣き寝入りはできず、信玄のもとに庄左衛門の所業を訴えにいった。
桜井は悔し涙を浮かべて、
「法の正義もあったものはありません。あんなモンスター原告の庄左衛門を成敗しないかぎり奉行をやめたいです。」
それを聞いた信玄は、
「たしかに、そちたちの言い分は正しい。曲渕めはけしからん。神聖なる法廷でそのような侮辱をしたということは、法度を制定した、わしをも軽んじたことになる。
しかし、まあ聞いてくれ、わしが前に板垣信憲を寺に押し込めたのは皆も存じておろう・・・といって庄左衛門の昔話をはじめた。
庄左衛門の主人・板垣信憲は郡内の仕置きも余りよくなかったため寺に押し込められ、板垣衆は解隊された。
ところがアイツは、山県隊への転属を命じたにも関わらず、信形に世話になったからその恩は忘れられないと申し、バカ息子の信憲を守護して寺にいた。ろくでなしの信憲でも主人と思ってな。
そんな折り、信憲はたまたま用事で来た本郷八郎左衛門とトラブルになって本郷に切り殺された。本郷に聞いてみると、切られた信憲の方が悪いことが判明したので本郷を特に処罰しなかった。
しかし、曲渕は何を勘違いしたのか、本郷がわしが差し向けた刺客と勘違いして、主人の仇討のために、このわしを付け狙いおったのだ。
そのとき、流罪にでもしようかと思ったが、わしは正左衛門を呼びつけて叱っただけで済ませた。利に付かず、よく信形の恩を忘れぬ心根にわしはひどく感心したのだ!
あのようなものはまるで猫のようなものじゃ。猫というものは飼い主にも心なつかず、きれいな部屋の中にも平気で糞をするというわるさをする。しかしネズミを良く捕って役に立つ。
ネズミもとりつくすと猫は自分のわるさを忘れて主人に重宝されていると傲慢になるものじゃ。
曲渕も猫じゃ。合戦の功名はネズミにとるのに等しい。そして、アイツの手柄は歴戦の勇士というにふさわしい。
ああゆうやつもいなくては、我が家は大きくなりえないであろう。
どうだ、わしに免じて許してやってくれ。わしからその方たちに頭を下げて頼む。
古より「良匠は材をすてることなし、明君は士をすてることなし」というではないか。勘忍の2字で考えてくれ。」
といった。
こう言われては、さすがに庄左衛門を成敗を要求できず、とうとう許したという。
(甲陽軍鑑)
信玄の例え話能力は異常
命狙われそうで持て余してたんじゃね信玄さん。
いい話なのか、悪い話なのか迷ったが…
天正十年の初鹿野伝右衛門さん
織田徳川の甲州攻めが始まり、武田家がついに崩壊する、と言う頃。
初鹿野伝右衛門は自分の領地の村人達に、こう言った。
「わしは勝頼様に合流し、運命を共にする。お前達は自由にせよ。」
これに村人達は驚いた。伝右衛門様は我々を見捨てるのか!伝右衛門様がいなくては、
我々はどうしていいか解らないでは無いか!もう武田の家は終わりだ。どうか武田を離反してください。
村人の多くが集合し、大騒ぎとなった。
しかし伝右衛門は考えを変えない。
「武田家への忠義のためだ。…ゆるせ、皆の衆。」
村人達は落胆した。「そこまで言われるのなら…我らにも考えがあります。」
「え?」
「行け!皆の衆!」村人達は伝右衛門の屋敷に乱入した!そしてなんと、伝右衛門の妻女を人質に取った!
村人「フフフ、伝右衛門様?あくまで勝頼様の元にいくというのなら、この人質がどうなるか、わかっておいででしょうな!」
伝右衛門さん「工エエェェ(´д`)ェェエエ工」
これによって伝右衛門さん、勝頼の下に駆けつけることが出来なかったとか。
確かにいい話かどうか分からんねw
領民も強引な手段に出たものだ
勝頼の元へ向かわなかった言い訳(作り話)っぽいな
滅亡目前の武田と命運を共にするなら
妻子も生き残れないだろうし、構っていられない筈
中には妻子を刺殺した後、勝頼に従って討死にした家臣も居たんじゃないか?
例えば大熊とか
これは確かに迷うなw
村人w
>>670
一揆に阻まれて勝頼に合流できなかったのは知っていたがそんな裏話があったのか。
・トイレに籠る男達、遊郭と家康、初鹿野伝衛門の陣羽織
・守銭奴「岡左内」、徳川家康とたんはんの鬼ごっこ
・じっと政宗の顔を見る鈴木石見、宝物を託す明智秀満
・彦根城の人柱「お菊の覚悟と井伊直継の機転」、小田原の陣の赤鬼
・堀秀政3連発「陣泥棒」「城攻め名人久太郎」「荷駄隊」