俄かだができるだけ疑問には答えていきたいと思うんで、質問あったらどうぞ
一番有名なのはそれだな。実際物語に登場するのは終盤も終盤なんだけど
長らく神話の出来事思われていたが、19世紀にドイツのシュリーマンがトロイア遺跡を発掘したことで実際にあった戦争だと証明されている
まあ、今回は古代抒情詩に語られている神話の方を語るんだが
その物語は、神々が祝う結婚式から始まる
新郎の名はペーレウス、新婦はテーティスという。テーティスはネーレイースという女神であり、「父よりも力において勢威において勝る子供を産む」と予言されていた(そのおかげでゼウスも手出しができなかった。よかったね!)。
ペーレウスは人間だったが、テーティスがペーレウスに惚れたとかペーレウスがケイローンの入れ知恵でテーティスを捕まえたとか、まあ色々あってテーティスを娶ることとなった。
ちなみにこの夫婦から生まれるのが、世界的に有名なある大英雄な訳だが、それはまた後で語ることにする。
しかし(お約束として)、そこに招かれていない神がいた。不和と争いをつかさどる女神エリスである。まあ婚約の場に不和や争いを好んで招く奴はいないだろうけど、ハブられた方にはそんなの知ったこっちゃない。
当然エリスは婚儀の様子を見てひどく腹を立て、ヘスペリデスの園に生えていた樹から黄金の林檎を一つもぎ取ると、「一番美しい女神へ!」と書き込んで神々の列に放り込んだ(放り込んでからそう叫んだとも)。
その中でも自信満々に「我こそが!」と主張した三人の女神がいた。
・夫の浮気は夫ではなく浮気相手とその子供に矛先を向ける良妻・ヘラ
・ゼウスの頭をかち割って生まれた知恵の女神(脳筋)・アテナ
・愛と美と欲情を司るスーパーナチュラルビッチ女神・アプロディーテ
である。
三女神は自分たちだけでは埒が明かないので、主神ゼウスに判断を求めた。
ゼウスは鷹揚に答えた。「いやー、ワシじゃ決められないんで、誰か適当な人間に判断させよう」 逃げである。
彼はトロイアの王プリアモスの五十人いる子供の内の二男で、生まれる時に母が不吉な夢を見たことから山に捨てられたところ牝熊がこれを育て、イーデーの山で羊飼いをしていた。
ちなみに長男はヘクトール。彼もまた大英雄として語られている。
預言者ラオコーンはもっと可哀想
後で出てくるよ。本当かわいそう
ヘラ 「主神ゼウスの妻である私こそ、女神の頂点に立つにふさわしい。因みに私に林檎を渡したら世界を支配する権力を上げましょう」
アテナ「美しさは智恵と健やかさによって生み出されるものです。ちなみに私にくれたらあらゆる戦に勝利することの出来る加護を与えましょう」
アプロ「美と愛を司る私が一番美しいのなんて当り前じゃない。あ、私にくれたら最高の美女を嫁にしてあげるわよ」
しょっぱなから賄賂を繰り出すあたり、いっそ清々しい。
年若でしかも山育ち、思春期真っ盛りのパリス君には迷うことなく答えた。
「アプロディーテ様が一番美しいです」
まあね、しょうがないよ。男の子だもん。
いま「ん?」と思ったあなた、鋭い。ヘレネーは妃。つまりメネラーオスの妻である。つまりNTRである。アプロディーテ何考えてんだ。
その美しさは女神のようと讃えられ、ギリシア中から求婚者が群がり、最終的にテュンダレオースはヘレネーに選択を委ねた。
そこでヘレネーLOVEの求婚者たちは彼女の選択を尊重し、選ばれた者の権利を守り、万一これを冒そうという者があればその者の非行を罰し、正当な権利者を擁護することを誓ったという。
つまりあれだ、アイドルと親衛隊とかオタサーの姫とか、あのあたりイメージしてくれれば大体あってる。
因みにその際、莫大な財産も一緒に持って行ったという話もある。メネラーオスにブチ切れるなという方が無理な話だ。
そこでメネラーオスは兄でありミュケナイ王のアガメムノーンやヘレネー親衛隊の諸氏と共に挙兵し、トロイアへの遠征を開始した。トロイア戦争の幕開けである。
なお、この際占い師に戦争の行方を占わせたところ、戦争には九年を費やすが十年目にトロイアを占領するだろう、との結果が出ている事を添えておく。
まずペーレウスとテティスの息子(最初に出てきた結婚式の主役ね)の息子、大英雄アキレウス
その友パトロクロス
その従弟アイアスと、同じ名前のアイアスがもう一人
(やや小柄だったので小アイアスとも)
大アイアスの従弟でギリシア有数の弓手であるテウクロス
先にも登場した英雄オデュッセウス
アルゴスの王族ディオメーデース
クレタ王イードメネウス
その他幕僚にメーリオネース、老将ネストール、ステネロス、プロテシラオス、パラメーデース、ピロクテーテース等々……とにかくギリシア中の名だたる英雄が集まっていた。
ちなみにオデュッセウスの従軍には諸々のすったもんだがあったり、
アキレウスは予言(名誉ある早死にか、さもなくば無名のまま老いて死ぬか)を恐れた母テティスが女装させて隠れさせていたとか色々エピソードがあるのだがここでは省略しておく。
この原因を占い師カルカースに訊ねると、総帥アガメムノーンが過去に女神アルテミスに失礼な振る舞い(女神への誓いを果たさなかったとも、女神の使いの鹿を射た上その腕前を自慢したとも)をしたため、その怒りを買っているのだという。
その怒りを鎮めるため、アガメムノーンの長女イーピゲネイアがアルテミスへの人身御供(多分生贄のこと)となり、それによって船団は出港することができた。
実は彼の持つ弓は大英雄ヘーラクレースから死の際に授かったもので、トロイアの攻略には必要不可欠な物だった。
しかしそれを知らなかったアカイア軍は、悪化する一方の病状に手の施しようもなく、最終的に彼を島に置き去りにしてしまった。
ピロクテーテースはそのため、トロイア戦争が終結間際になる九年後までこの島で一人っきりで過ごすこととなったのだった。
しかしトロイアは船団の来襲を既に察知しており、海岸に布陣して待ち構えていた。
そのため、最初に船から飛び降り上陸したテッサリア勢の大将プローテシラーオスは、上陸の直後に物陰から飛び出してきた敵の槍で突かれ、最初の戦死者となった。
この兵士は、一説には英雄ヘクトールであったとされる。
彼はトロイアの将軍キュクノスを討ち取り、軍勢を撃退して味方の上陸を援護した。
ちなみにキュクノスはポセイドンととある川のニンフの子であり、乙女のように白い肌とも白鳥(キュクノス)のように白い髪をしていたとも言われる。
神の子ゆえに鉄でも青銅でも傷つかない身体を持っていたため、アキレウスは大石を彼の頭に叩きつけて殺したとされる。
実はアレスはあんま干渉してないんだよ。
それよりアポロン・アテナが自重しなさすぎ
何よりも大将軍ヘクトールは武勇に優れ、巧みに連合軍に被害を与えていった。
そしてそのまま予言の通りに九年の時が流れ、戦に倦んだギリシアの将軍たちは近隣の街を略奪して回るようになった。
この際近隣の街を略奪した折に美しい二人の娘が捉えられ、それはアキレウスとアガメムノーンにそれぞれ差し出された。
しかしアガメムノーンが得た娘はアポロン神官の娘であり、神官に娘を返してくれるよう懇願されたアガメムノーンはこれをすげなく拒絶してしまう。
嘆き怒った神官はアポロン神に請願し、アポロンは災いの矢を放ち、アカイア軍に災いを与え続けた。
彼は真実を明かし、乙女を神官に返し、生贄を捧げアポロンをなだめるしかないと告げる。
そう言われればさしものアガメムノーンも娘を返すことを了承せざるを得なかったが、「だったらなんか別の褒美くれや」とごね始める。
アキレウスが「トロイア攻め落としたら三倍でも四倍でも財宝あげるから」と言っても取り合わず、しまいには「じゃあお前がもらった娘くれよ。なんだったら今から取り立てに行ってやるぞ」とか言い始める始末。
これにはさすがのアキレウスもプッツン。危うく刃傷沙汰に発展しかけるが、女神アテナが降臨してのとりなしもあって何とか斬りあいだけは思いとどまった。
しかし彼は散々アガメムノーンを罵りまくり、「ヘクトールに部下散々殺されてから泣きついてくるなよ!」と言い捨てて自陣へと戻っていった。
怒り狂うアキレウスのところに行って娘を取り立ててこいとかひでえ罰ゲームだが、
アキレウスは「君らは命令に従っただけ、何も悪いことなどない。連れて行くがいい。けど後で俺の方が正しかったって証人になってくれよ?」と言って、娘を二人に渡してやった。
32: 名無し 2016/09/03(土)12:43:46 ID:9ll
するとテティスが現れ、息子を慰めながら何があったのかを訪ねてきたので、彼は涙ながらに事の顛末を語ると「アカイア軍をちょい痛い目に遭わせて、アガメムノーンに俺の有難さを思い知らせてやりたい」と願った。
息子の理不尽な扱われ方に涙したテティスはすぐにオリュンポスへ戻ると、ゼウスに「あの傲慢なアガメムノーンにキャン言わせてやって!」と拝み倒した。
目覚めたアガメムノーンはお告げに従い総攻撃の準備をするが、その前に全軍の士気を確かめようと、偽の帰国を布告してみることにした。
彼は全軍を集めると、今回の遠征がいかに無駄骨で、故郷で家族が待ちかねているかを語った。そして今すぐ船を出して、故郷へ帰ろうではないかと誘ってみた。
すると、多くの兵士たちが動揺し、罵りたてながら船へ駆け寄り、浜辺へ引き下ろそうとし始めた。
これにはアガメムノーンばかりかオデュッセウスも驚き、大急ぎで兵士たちを打ち据え叱り飛ばし、どうにか阻止した。
広場に引き返してきた兵士たちに、今度はオデュッセウスが「これまでの努力を無駄にしてはならない。予言では十年目にトロイアは陥落すると言ってるし。ここで帰るのは馬鹿のすることだ」
と叱咤激励し、どうにか一同の士気を鼓舞することに成功した。
そうして両軍がいよいよ間近に迫った時、トロイア軍の先陣にはあのパリス――今回の戦争の元凶――が盾と槍を持って立ち、アカイアの将に一騎打ちを申し出た。
それに喜び一騎打ちを受けたのは、妻を奪われたメネラーオス王だった。ビビッて引っ込もうとしたパリスだったがヘクトールにふがいなさを窘められ、覚悟を決めて一騎打ちをすることになった。
そして、この勝者がヘレネーとその他の財宝の一切を手に入れることが取り決められ、決闘の間戦いを中断する約定が取り交わされた。
ボッコボコにされた挙句兜をつかまれてギリシア側に連行されそうになったパリスは、密かに出したアプロディーテの助け舟のおかげで危うくトロイアへと逃げ帰った。
ここで終わればよかったのだが、それに納得しない連中がいた。オリュンポスの神々だ。
戦場を眺めていたゼウスはトロイアに同情的で和睦を望んだが、妻のヘラはアカイア軍に加勢する側だった。
彼女はアテナに命じてトロイアの弓手パンダロスを唆し、メネラーオスに矢を射かけさせることで約定を破らせ、戦争を再開させた。
とか普通に起きるから、NTR程度で怒るメネラオスが悪い
現実世界でも割とある話だけどね……
人んとこの国民を拉致しといて、返して欲しけりゃアレよこせとかいう将軍様とかねw
アテナはディオメーデースに加護を与えてスーパーモードにするわ、アプロディーテとアポロンはピンチに陥った自分の息子を逃がそうとするわゼウスはグラウコスの心を惑わして武具を差し出させるわ、やりたい放題。
しかし流石にやりすぎたと反省したのか、アテナとアポロンは談合の末、ヘクトールとアカイアの代表を一騎打ちさせ、合戦を一時中止させることとなった。
広場で二人は向き合うと、まずヘクトールが槍を投げた。
その槍は、牛革が七枚貼られた塔のようなアイアスの盾を皮六枚まで貫いたが七枚目で止まった。ついでアイアスが投げた槍はヘクトールの盾を貫き、彼は危うく身をよじって致命傷を躱した。
そして二人は激しく打ち合ったが、夜になるまで決着がつかなかったために決闘は中止となった。
その夜、ゼウスはアカイアの陣に不吉な予感を降らせた。
アカイア側は何人もの将を討ち取ってはいたが、遠征による疲れから指揮に乏しく、ヘクトール率いる意気軒昂なトロイア軍に押され始めていた。
しかしアキレウスは完全にやる気をなくしており、
「俺戦争に行ったら死ぬって予言されてるんだよね。考えてみたら命より大切な物なんてないじゃん? やっぱ俺帰るわ。アガメムノーンにもそう言っといて」
と明日にでも帰ろうと帰り支度万端状態だった。
その攻撃は激しく、ディオメーデースがパリスの矢に傷つけられ、オデュッセウスもソーコスの槍に深手を負い、ギリシア軍は一時撤退寸前までの被害を受けた。
俺の読んだ文献だと、単にゼウスが戦場とかアカイアの陣に雷落として皆の不安をあおった、とだけあるなぁ
彼は頼み通りにギリシアの陣幕を見に行ったが、そこで手当てを受ける将たちを見て大きなショックを受けた。
戻ったパトロクロスは涙を流しながらアキレウスに、君が出ないならせめてその代わりにと出陣の許可を乞い、アキレウスの武具を借り受け部下のミュルミドーンを伴い出陣する。
トロイア軍はアキレウスの武具を身に着けた彼をアキレウスと勘違いし、恐怖に襲われて蹴散らされていった。
そして態勢を建て直し、アポロン神の露骨な支援を受けたヘクトールによってパトロクロスは討ち取られてしまうのだった。
彼の遺体はメネラーオスやアイアスに護られてアカイア側へ持ち帰られたが、武具はヘクトールに奪われてしまった。
民族はわからんけど、トロイア(イリオス)はトルコ北西部、ダーダネルス海峡付近で発見されてる。
だからトルコやそのあたりの祖先になったと考えられるんじゃないかな。皆殺しになってなければ。
因みに後述するけど、トロイアから脱出してローマ人の祖先になった人が語られている。真偽はわからんけど
アキレウスの復帰にアカイア軍は勢いを取り戻し、トロイア軍に猛然と襲いかかった。
彼の狙いは、むろん友の仇のヘクトールだった。名だたる大将を次々になぎ倒し、ヘクトールの弟ポリュドーロスまで殺されてはさすがにヘクトールも戦いを挑まざるを得なかったが、最初の激突はアテナとアポロンの介入によりお流れになる。
しかし憤怒の化身と化したアキレウスを見た瞬間恐怖に襲われ、逃げ出してしまう。
逃げるヘクトールと追うアキレウスは城壁の周りを三周したが、引き離すことも追いつくこともできなかった。
そこでアテナがヘクトールの弟デーイポボスに化け、彼に加勢に来たと偽って足を止めさせた。
二人は互いに槍を投げ合ったが、どちらも相手には当たらなかった。ヘクトールはデーイポボスに次の槍を求めたが、すでに彼の姿はない。
謀られた事に気付いた彼は覚悟を決めてアキレウスに挑みかかったが、彼の槍に喉を貫かれ、ついに討ち取られた。
彼はヘクトールの死体を戦車で引きずり回してアカイアの陣まで戻ると、パトロクロスの霊を慰めるための競技会を開いた。
それでもなお死体を引きずり回すことを辞めなかったので、ヘクトールの父プリアモスは深夜にこっそりとアキレウスを訪れて遺体を返してもらい、国に持ち帰り葬儀をあげた。
彼女はプリアモス王に恩義があり、ヘクトールの抜けた穴を埋めてトロイア軍をたてなおし、マカーオーンをはじめとするギリシア軍の英雄を幾人も討ち取った。
討ち取る刹那、アキレウスはペンテシレイアの美しさ、そして勇ましさに気付き、心を奪われる。
彼女の遺体の前で彼は激しい後悔に苛まれ、茫然と立ち尽くすことしかできなかった。
ちなみにこの時、テルシーテースという陰口屋が敵軍の女に心を奪われたアキレウスを嘲ったが、当然怒りを買って槍の一突きで殺されてしまう。空気読めないやつって嫌だね。
アキレウスはペンテシレイアの遺体を清め、トロイア軍に遺体を届け、丁重に葬らせた。
彼は暁の女神エーオースの息子であり、黒い肌をしていた(黒人のことだろう)。
彼は暁の女神らしく輝く美を備え、鍛冶神ヘーパイトスの手による甲冑を着けていた。
その武勇も輝くほどで、ヘクトールにも劣らないほどだったとされる。
そこでネストールを援けるため、彼の息子アンティロコスが立ち向かった。
そして互いに槍を投げ合った末、メムノーンの槍がアンティロコスを貫き、討ち取った。
……うん、どっかで見た展開だな。
どっちつかずのゼウスは両社の嘆願に当惑し、運命を天秤にかけて戦いの行方を決めたが、メムノーンの皿が沈んだため、メムノーンは討ち取られた。
しかしエーオースは更にゼウスに強く迫ったため、ゼウスはメムノーンに不死を与えたとされる。
……ちなみにこの後メムノーンの遺体がエチオピアに帰ってるわけだが、不死を得たってことは死ななかったのか、それともその後復活したのか。
ちょっと手持ちの文献ではわからなかったので、補足してもらえるとありがたい
しかし門が閉じる前に、城内に飛び込んだ影があった。
誰あろうアキレウスだ。彼はこの機に乗じてただ一人アイアス(大)を連れて乗り込み、一気にトロイアを陥落させようとしたのだった。
アキレウスは不死である。先に死の予言をされていたこともあり、我が子の死を恐れたテティスが冥界の川ステュクスに彼の身体を浸したため、不死の加護を受けていた。
ただしテティスが固く握っていた踵だけには水がかからず、そのため踵が彼の弱点となっていた。
しかしその時、一本の矢が彼の踵を貫いた。
矢を放ったのはトロイアの王子であり、この戦争の元凶のパリスだった。彼は太陽神アポロンからアキレウスの身体の秘密を教えられていたのだ。
因みに何故アポロンが教えたかといえば、先の戦いでアキレウスがヘクトールの遺体を散々に辱めたのが原因らしい。
踵に受けた矢により不死性を失ったアキレウスは、続く矢に胸を貫かれ、ついに討ち取られた。
トロイアにとって怨敵であると同時に、アキレウスの武具はひとつ残らず神から与えられた神造武器だ。そりゃあ兵士からしたら垂涎の的だ。
しかしアキレウスとともに乗り込んだアイアスが必死に遺体を護った。彼はアキレウスの遺体を肩に担ぎ、群がるトロイアの戦士たちを防いでいた。
そのうち、援軍としてオデュッセウスが駆けつけ、彼らは敵勢の追撃を防ぎ、辛うじてギリシア軍側へと帰還することができた。
アキレウスの遺体は悼歌で弔われて火葬され、テティスによって「至福者の島(エリュシオン)」へと連れ去られた。
最期はだいぶやらかすけど
トロイア戦争におけるオデュッセウスは割と常識人で賢将なイメージだね。外道具合もそれなりに抑えめだし
二人はお互い譲らず、いっそ一騎打ちで決めるかというところまで行ったが、結局評議で以て決めることとなった。
その際、アテナとアガメムノーンはオデュッセウスに味方し、アキレウスの遺体の奪還の際の彼の働きをたたえ(アイアスは死体を担いだだけだとか貶して)、全軍の決議をオデュッセウスに傾けさせた。
この屈辱にアイアスは狂乱し、羊の群れをオデュッセウスとその仲間と見誤って襲い掛かった。
しかし散々暴れまわって正気に戻ると、己の凶状を恥じ、不名誉な生よりは名誉ある死をと自刃してしまうのだった。
その頃、老王プリアモスの子(つまりヘクトールやパリスの兄弟)で占いに長けたヘレノスという人物が、パリスに愛想を尽かして密かにトロイアから逃げ出していた。
彼はもう戦争が嫌になり、平和に暮らしたいと考えていた。
それを察知したオデュッセウスは彼を捕え、トロイアの行く末を占わせた。
ヘレノスは、トロイアの陥落には『ヘラクレスの弓』『アキレウスの子』『トロイア城内に祭られてる武装アテナ像(パラディオン)』が必要だと告げる。
オデュッセウスはその情報の対価として、陥落後の身の安全を保障した。
オデュッセウスは未だ毒に苦しむピロクテーテースを騙して弓を奪おうとしたが、苦しむ彼を見たディオメーデースは深く同情する。
やがて毒によってピロクテーテースが昏倒するとオデュッセウスは弓を奪って病人は置いていけと命じるが、正直者のディオメーデースはそれを拒否し、蘇生したピロクテーテースに全てを白状した。
当然彼は激怒したが、その時神となっていたヘラクレスが現れて彼をなだめ、ギリシア軍にいるポダレイリオス(名医アクレピオスの子)の治療を受けるよう勧めた。そしてピロクテーテースは和解を受け入れ、アカイア軍に復帰したのだった。
さらにオデュッセウスはスキューロス島に赴き、アキレウスの遺児であるネオプトレモスに自分が譲り受けていたアキレウスの武具のことごとくを譲り渡すことで迎え入れた。
なお、この際にはトロイア城内から通謀者が手引きをしていた。誰あろう、ヘレネーである。
彼女はメネラーオスとパリスの決闘の際、女神イーリスによって故郷と元の夫への愛情を吹き込まれ、彼の元へ帰ることを望んでいた。
彼女の手引きでオデュッセウスはアテナの神殿に潜入し、番人を殺して扉を開いた。
神殿には、盗まれることを危惧したプリアモスによっていくつもの偽物が配置されていたが、ヘレネーの助けによって本物の像を見つけることに成功する。
オデュッセウスは神像を携えてディオメーデースと落ち合い、アカイア軍へと帰り着いた。
巨大な木星の馬の像を作り、その中に勇士を隠し、一気にトロイア市内を攻略する――有名な『トロイの木馬』である。
そして選りすぐりの勇士を中にひそませ(人数は30~300と、媒体によってまちまち)、残った軍は陣営を焼き払うと船に乗り、遥かテネドス島の沖合に停泊して作戦の成否を見守った。
なお、これらの作業は全て夜間に行われた。
さらに作戦の達成を十分ならしめるため、芝居の上手いシノーンという男が残った。
木馬には『故郷への帰還の感謝に、この木馬をアテナに奉納する』と書き記された。
そして奉納の銘を読むと、いよいよギリシアも戦に飽きて引き上げたと大いに喜び、これを曳いて城内に入れようとした。
アポロンの神官のラーオコオーンは「これはアカイア軍の謀略であろうから軽率に城内に入れてはいけない」と人々を諌めた。
また、王女で予言者のカッサンドラーは、その力で木馬の胎内に軍勢が潜んでいるから入れてはならない、と叫んだ。
その声を聴いた人々は、不吉だとか焼き捨てろとか口々に罵り合い、騒然となった。
またラーオコオーンの元に突然二匹の大蛇が現れ、彼と二人の息子を絞め殺してしまった。
そしてとどめにシノーンが現れ、ギリシア側の窮状をまことしやかに語り、アカイア軍は引き上げたのだと人々に信じ込ませた。
こうして、木馬は首尾よく引き上げられ、トロイア城内のプリアモスの館の近くに飾られることとなった。
しかしその夜、人々が眠りに落ちると木馬の蓋が開き、武装したアカイアの勇士らが姿を現した。
同時にシノーンはアキレウスの墓から狼煙を上げ、沖合で待機していたギリシアの船隊を呼び戻した。
やがて内外から呼応して城門を開くと、オデュッセウス、ディオメーデースを筆頭としてメラネーオス、ネオプトレモス以下の将たちは雪崩を打って城内に攻め込み、眠っているトロイアの人々を殺戮し、財産を略奪し始めた。
プリアモスは抵抗を断念し、王宮内のゼウスの祭壇にすがって命乞いをしたが、父の仇に燃えるネオプトレモスは容赦なく祭壇を血で穢した。
後にこの冒涜の報いを受けてネオプトレモスは夭死するが、それはまた別の話とする。
彼女の侍女のアイトラーも彼の孫が連れ帰ったとされているが、このアイトラーは後に英雄テセウスの母となる。
それに怒ったオデュッセウスは彼を石打ちの刑に処することを命じたが、他の将軍たちは拒否した。小アイアスもアテナ像にしがみついていたからだ。
後に小アイアスと将軍たちはこのことでアテナの怒りを買って帰国中に死んだが、ディオメーデースだけは助かった。
彼女はアテナのお気に入りだったからだ。解せぬ
彼は傷を癒すためにかつての恋人で、アプロディーテの褒美を得るために捨てたオイノーネーに助けを求めるがすげなく断られ、帰路の途中で命を落とした。
だがアイネイアースはアプロディーテの加護を受けて家族と共に城外へ逃れ出て、後にイタリアに着いてローマ人の祖先になったとされている。
そして城内に火が鼻たれ、トロイアはあまりにもあっけない最期を遂げたのであった。
総帥アガメムノーンには王女カッサンドラーが
ネオプトレモスにはヘクトールの妻アンドロマケーが
オデュッセウスにはプリアモスの王妃ヘカベーが褒章として与えられた。
ヘクトールの幼子アステュアナクスは、後顧の憂いを断つため塔から投げ落とされた。
アキレウスが思いをかけた(一説によるとアキレウスは彼女に見とれたために踵を射抜かれた)ポリュクセネーは、アキレウスの墓の前で殺された。
この話は『オデュッセイア』に詳しく語られている。こちらもすごく面白い話なので、是非読んでみてほしい。
オデュッセイアの俺は誰でもない!ってトンチ好き
史実?ギリシャ神話は実際にあったことなのか?
結構長いことただの神話だと思われていたけれど、19世紀にドイツのハインリヒ・シュリーマンという人物がトロイア遺跡を発掘したんだよ。
しかもその遺跡には火災の後とか頭と胴体が離れた人骨が残ってて、それでトロイア戦争(少なくとも大規模な戦争)が本当にあったらしいということが判明している
イリオスだっけ
でも伝説と街の作りが違うんだよね
後でじっくり読ませてもらうわ
そう言ってくれると書き込んだ甲斐がある。
でも原典の方が絶対面白いんで、興味持ったらそっちに挑戦してほしい
これで興味持って本格的に読む人が増えると良いなと思って書き込ませてもらった。
これらは共にトロイア戦争の一部分を語っていて、イリアスは青年アキレウスが親友のために復讐をとげ戦果を挙げる英雄物語で『オデュッセイア』は戦後に知将オデュッセウスが漂流しながら故郷ギリシャを目指し、晴れて待ち焦がれる妻のペネロペーと再会を果たす話
これらは叙事詩、つまり韻を踏んで、歌って語る文章になっている
感覚としては平家物語を盲目の琵琶法師が語り継いでいたみたいなのに近くて
ホメロスも盲目とされている
この二つはあくまでトロイア戦争の一場面で他の部分のトロイア戦争の内容を補完するようなホメロス風叙事詩も当時はあったとされていてタイトルだけは残っているが、肝心の中身が残ってない古典ギリシア期の時点では残っていたようだが
それでもその時点で傑作は『イリアス』『オデュッセイア』の二作とされていた
トロイア戦争の顛末は、古典ギリシア期からやや後代の、アレキサンダー大王がギリシアの諸ポリスを征服してヘレニズム文化に入り、さらにローマがそのマケドニア人の国家を征服した後の、アポロドロス『ビブリオテーケー(和名:ギリシア神話)』に詳しい
帝政ローマの頃でもギリシア神話は地位が高かった
ビブリオテーケーは叙事詩でない、普通の文章なので単なる概説
もっとも翻訳で読む日本人にとっては、韻を踏んでるか、リズムがあってるかなんて感じ取れなくて、かえって言葉の選び方が意味不明で読みにくいだけだから都合がいい
他に重要なのはヘシオドス『神統記』、これは叙事詩で天地創造からゼウスの王権までの顛末が書いてあってようするに内容の感覚は古事記に近い
トロイア遺跡ともうひとつ重要なシュリーマンの発見がギリシャにあるミュケナイ遺跡
これは英語読みでミケーネ文明とか呼ばれていて、出土した仮面をアガメムノンの黄金のマスクとか呼んでる
あとギリシア語を表すためのギリシャ文字の系譜じゃない独特の文字を使っていて解読されている
まあ単にシュリーマンがトロイア戦争は史実だっていう信念でもってそうなずけたのをわれわれも便宜的にその呼び方を継投してるだけなわけだけど
すくなくとも、トロイア遺跡が戦跡である事や、それと同時期にギリシアに強力な王権があった事はわかっている
決定的に否定する根拠もないのだろう
紀元前1200年ごろの遺跡とされてて、ちょっとここら辺がどこまで信憑性があるのかは
素人には難しすぎる、偉い人でそう考えてる人もいるってことで・・・
しかし古典ギリシア期の時点では、トロイア戦争またはその他のもろもろな神話の世界観が
なんらかの歴史的事実を物語調にして語り継いだ物だという常識はあったようで
その価値観によってかの有名なヘロドトスの『歴史』は書かれている
当時のギリシア人の価値観という意味では、確かにそれが史実であると考えられてきた